顧客が離れる本当の理由を可視化する。顧客調査の設計手順

――離脱の調査を、質問票ではなく「間隔の延び」から設計する。Excelテンプレートつき。
山口偉大 2026.10.07
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この記事で分かること

  • 離脱の調査は、質問票から始めると失敗する。持ち主を決め、「離れた」を定義し、間隔の延びを見える化してから聞く、7つの手順

  • 始めた月ごとの継続の表と、間隔が延びた顧客の一覧を、手元の取引データから自動でつくるExcelテンプレート

  • 誰に、何人に、何を聞くか。乗り換えの経緯を聞く質問と、解約時アンケートの作り直し方

目次

  • ほとんどの会社は、調査の順番が逆になっている

  • 型ごとに、「離れた」を決める(無料で渡す道具)

  • 月曜の3つのずれは、どの手順で埋まるか

  • 記録がない事業で、間隔を見る方法(月曜の約束)

  • 離脱の原因の多くは、入口で決まっている

  • 無料パートだけで、今日できること

  • 全体像:離脱調査の7つの手順

  • 手順0|この調査の持ち主を、一人決める

  • 手順1|「離れた」を定義する

  • 手順2|始めた月ごとに、継続を見る

  • 手順3|間隔が延びた人を、一覧にする

  • 手順4|聞く相手と人数を決める

  • 手順5|乗り換えの経緯を聞く

  • 手順6|月に1回、30分で見て決める

  • 離脱の原因は、入口にあった

  • 型ごとの通し実演

  • この手順の限界

  • 自己診断の点検リスト

  • 今日の要点

***

月曜の記事で、満足度調査は「今の顧客」に「今の気持ち」を聞く道具だから、離れた人が代わりに何を選んだのかは構造的に出てこない、と書きました。支援先のBtoBのSaaSで、NPSは高いのに解約率が上がっていた話です。

アンケートは「大丈夫」と言っていた。管理画面のデータは「離れ始めている」と言っていた。

では、どう調べればいいのか。今日はその手順を、最初から最後まで書きます。手元の取引データを貼るだけで、継続の表と、間隔が延びた顧客の一覧ができるExcelのテンプレートもつけました。

ほとんどの会社は、調査の順番が逆になっている

離脱の理由を知りたいと思ったとき、多くの会社が最初にやるのは、質問票をつくることです。何を聞くかを会議で決め、顧客全員に配り、集まった回答を集計する。グラフができて、報告書ができて、それで終わる。

この順番だと、月曜に書いた3つのずれが、そのまま調査に持ち込まれます。

答えてくれるのは、残っている顧客です。聞く時期は、顧客ごとの事情とは関係なく、会社の都合で決まります。質問は「満足していますか」「何が足りませんか」になり、離れた人が代わりに何を選んだかは出てきません。

順番を逆にします。

最初に、データで「誰が、いつ離れ始めたか」を見つける。その人たちにだけ、離れ始めたタイミングで、乗り換えの経緯を聞く。 質問票をつくるのは、いちばん最後です。

こう書くと大がかりに聞こえますが、必要なのは、顧客を見分ける番号と、取引の日付だけです。どちらも、たいていの会社がもう持っています。

型ごとに、「離れた」を決める(無料で渡す道具)

順番を逆にするための最初の一歩は、自社にとって何が「離れた」なのかを決めることです。これが決まっていないと、誰が離れたのかを数えることすらできません。

月曜に書いた、離脱の3つの型ごとに、定義の例を置いておきます。

型 当てはまる事業 「離れた」とみなす例 契約型 SaaS、BtoB、学校・塾など 解約した、更新しなかった。または、使う間隔が45〜60日を超えた 購入・来訪型 D2C・EC、小売、飲食、美容など いつもの購入・来店の間隔の2〜3倍、空いた 二面型 マッチング、予約サービス、フランチャイズ本部など 両側それぞれで、取引の間隔の基準を決める

ポイントは、契約型でも「解約した日」だけを離脱にしないことです。解約の手続きは、離れる決心をしたずっとあとに来ます。使わなくなった時点を、もう一つの「離れた」として数える。 そうすると、解約より何か月も前に、離脱の兆しをつかめるようになります。

購入・来訪型は、「解約」という区切りがないので、日数で線を引くしかありません。月に1回買う商品なら60〜90日、年に数回の商品なら180日以上、というように、自社の平均の間隔から決めます。

この定義だけでも、今日から自社の離脱を数え始められます。顧客の一覧を開いて、最後の取引日がこの線を越えている人を数えてみてください。思っていたより多いか、少ないか。そこから始まります。

月曜の3つのずれは、どの手順で埋まるか

月曜の記事で、満足度調査が見落とすものを、3つのずれとして整理しました。今日の手順は、そのずれを一つずつ埋めるように組んでいます。

相手のずれ(答えているのは残っている顧客だけ。答える人と、やめると決める人が違う)は、聞く相手を3つのグループに分け、決める人にも聞くことで埋めます。

時期のずれ(理由は、解約の日ではなく、間隔が延び始めた日にある)は、始めた月ごとの継続の表と、間隔が延びた顧客の一覧で埋めます。いつ、誰が離れ始めたかを、データで先に見つけるということです。

聞き方のずれ(「満足ですか」には、置き換え先が出てこない)は、乗り換えの経緯を、出来事として聞く質問で埋めます。

月曜が「なぜ分からないのか」の話だったとすれば、今日は「どうすれば分かるのか」の話です。

記録がない事業で、間隔を見る方法(月曜の約束)

月曜の記事で、記録がない場合にどうするかは、別の機会に書くと約束しました。月曜を読んでくださった方が誰でも使えるように、ここは無料で書きます。

間隔を見るには、顧客を見分けられる記録と、その顧客がいつ来たかの記録が要ります。現金払いの多い店舗や飲食では、これがないことがよくあります。ただ、まったくゼロという会社は意外と少ない。すでにある記録から、拾えることがあります。

  • 予約の記録:予約システムを使っていれば、顧客ごとの来店日がそのまま取れる

  • 会員アプリ、ポイントカード、スタンプカード:会員番号ごとの利用日が取れる

  • 請求や配送の記録:BtoBの受託なら請求書、ECなら配送先ごとの発送日

  • 問い合わせや予約変更の履歴:頻度の変化が、間隔の延びの代わりになる

  • 紹介の経路:誰の紹介で来たかが分かれば、その紹介元ごとに残り方を比べられる

どれもない場合は、上位の顧客から、手で記録を始めるしかありません。常連の上位30人だけでもいいので、来た日を記録していく。3か月続ければ、間隔の延びが見え始めます。全員を追う必要はありません。売上の大きな部分を占める顧客の間隔が延び始めたら、それだけで十分に調べる価値があります。

どの記録も、顧客番号と日付の2つがあれば、この後の手順で使えます。有料パートで配るExcelテンプレートも、この2つだけで動くように作ってあります。

離脱の原因の多くは、入口で決まっている

もうひとつ、手順に入る前に共有しておきたいことがあります。

離脱を調べていくと、離れた理由が「最近の何か」ではなく、最初の数週間、数か月の体験にさかのぼることが少なくありません。使い方が分からないまま終わった。期待していた効果を感じる前に、習慣が途切れた。2回目を買う理由が見つからなかった。

Marketing-OSで「90日以上の継続」を到達点にしているのも、そのためです。最初の90日で習慣ができるかどうかが、その後の継続を大きく左右します。離脱の調査は、出口を調べているようで、実は入口を調べ直す作業でもあります。この話は、後半で一次情報として詳しく書きます。

無料パートだけで、今日できること

ここまでで、有料パートを読まなくても始められることがあります。

  • 型ごとの例を参考に、自社の「離れた」の線を一本決める

  • 顧客の一覧を最後の取引日の古い順に並べて、その線を越えた人を数える

  • 線を越えたばかりの人から3人を選んで、「今、代わりに何を使っていますか」とだけ聞く

これだけでも、満足度調査の結果とは違う景色が見えるはずです。3人の答えがばらばらなら、まだ聞く人数が足りません。3人とも同じものに置き換えていたら、それが最初に手をつけるところです。

この続きで渡すもの

有料パートでは、次のものを渡します。

  • 離脱調査の7つの手順(持ち主の決め方から、月1回の会議まで)

  • Excelテンプレート(取引データを貼るだけで、始めた月ごとの継続の表、間隔が延びた顧客の一覧、月1回見る「離脱の1枚」が自動でできる。Googleスプレッドシートでも動く)

  • 何人に聞けばいいかの目安(研究の条件つき)

  • 乗り換えの経緯を聞く6つの質問と、聞くときの注意(同意、個人情報、謝礼、AIの使いどころ)

  • 解約時アンケートを、一問だけ足して作り直す方法

  • 3つの型ごとの通し実演

「離れた」の定義が決まったら、次に知りたいのは、それがいつから、どの顧客で起きているかのはずです。その見つけ方から書いていきます。

ここから先は、サポートメンバーの方に向けて書きます。

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