顧客獲得戦略の全体像を整理してみた

広告・SEO・SNS・オフラインを横断比較し、ROIの測定方法と事例を解説
山口偉大 2025.09.17
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✓ レターのテーマ
・マーケティング
・事業戦略
・企業/事業分析
・汎用的なビジネスノウハウ
・キャリア論

自己紹介

まずは簡単な自己紹介から。略歴はこんな感じです。基本的には、起業家として活動しながらも「マーケティングや事業開発」が自分のキャリアの軸となっております。

経歴

山梨県出身、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。PR会社「株式会社ベクトル」にてPRコンサルタントとして従事したのち、「株式会社Branding Engineer(現 株式会社TWOSTONE&Sons)」へ参画、各種人材・DX関連の事業立ち上げや事業部長・経営企画を歴任し独立。上場企業から地方の中堅・中小企業までありとあらゆる業種・規模感の新規事業開発 / マーケティング / ブランディング / PR支援等を実施。その後「Start-X合同会社」「Good Vibes Tokyo合同会社」を設立。マーケティングや事業開発、クリエイティブ制作等の支援事業と共同・自社事業を複数展開。現在は、株式会社グッドパッチへ参画。社長室で各種事業開発に従事しています。複数企業の顧問・アドバイザーも兼務。

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こんにちは!山口です。

今回のテーマは 「顧客獲得戦略」 です。

顧客獲得はすべての事業にとって避けて通れないテーマですが、「広告を打てばいい」「SEOに強くなればいい」といった単発的な議論に陥りがちです。実際には、複数のチャネルを横断して設計し、ROIを定量的に把握し、改善を高速で回すことが欠かせません。

この号では、広告・SEO・SNS・オフラインの4つの代表チャネルを横断的に整理し、それぞれの特徴・強み弱み・ROIの測り方・最新事例を掘り下げます。さらに、チャネルを横断して成果を最大化する「横断戦略」の実務もご紹介します。

今号のポイント(3つの要約)

  • 広告:短期効率は高いが依存リスク大。LTV基準でROIを測定することが重要。

  • SEO・コンテンツ:中長期で効くが即効性はない。ROIは「指名検索増加」「コホート残存」で評価。

  • SNS・オフライン:ブランド認知とコミュニティ形成の役割。短期ROIだけでなく、波及効果を測定する視点が必要。

1. 顧客獲得戦略の全体像

1-1. 獲得戦略は「時間軸」で整理すると見やすい

  • 短期:広告(Google、Meta、Yahoo!など)

  • 中期:SEO、コンテンツマーケティング

  • 長期:SNS、ブランド認知、オフライン施策

1-2. ROIを測定する際の基本フレーム

ROI = (LTV − CAC) ÷ CAC

  • LTV:顧客生涯価値(継続率・単価・アップセルを含む)

  • CAC:顧客獲得コスト(広告費+人件費+制作費など)

ROIは単発の「CPA」ではなく、顧客の生涯価値ベースで評価することが必須です。

2. チャネル別の徹底比較

2-1. 広告(Paid Media)

特徴:即効性が高く、スケールしやすい。だが依存しすぎると脆い。

  • 強み:配信ターゲットの柔軟性、即効性

  • 弱み:CPC上昇リスク、広告疲れ、規制リスク

ROI測定方法

  • 短期:CPA、CTR、CVR

  • 中期:Payback期間(回収月数)

  • 長期:LTV/CAC

最新事例

  • 国内EC企業:リスティング広告のROI低下を受け、動画広告(YouTube Shorts)へシフト。結果、指名検索が前年比+30%。

  • SaaS企業:Meta広告からのリードはCPAが許容範囲内でも解約率が高いことが判明。→広告別にLTVを測定し、LinkedIn広告に比重を移すことでLTV/CACが改善。

2-2. SEO・コンテンツ

特徴:即効性はないが、中長期の集客基盤になる。

  • 強み:安定的な流入、広告依存からの脱却

  • 弱み:成果が出るまでに時間、アルゴリズム変動リスク

ROI測定方法

  • 短期:オーガニック流入数、CTR、滞在時間

  • 中期:指名検索数の増加

  • 長期:コホート分析(自然流入顧客のLTV)

最新事例

  • 国内人材系メディア:ブログ記事×ホワイトペーパーでSEOを強化。半年でオーガニック流入が+120%、リードの質が広告経由より高いことが判明。

  • D2C:指名検索の増加を「SEO ROI」として定義。コンテンツ施策によるブランド想起を測定。

2-3. SNS(Social Media)

特徴:認知・関係構築に強み。直接コンバージョンよりも「波及効果」を測定すべき。

  • 強み:顧客との接点、UGC拡散、低コスト

  • 弱み:アルゴリズム依存、炎上リスク、CVへの直結は弱い

ROI測定方法

  • エンゲージメント率

  • SNS経由の指名検索増加

  • ハッシュタグ分析(UGC量)

最新事例

  • D2Cブランド:TikTok発のUGCを広告クリエイティブに二次利用。CPA−25%、CTR+40%。

  • B2B:X(旧Twitter)でのスレッド企画から直接リード獲得は少なかったが、展示会来訪者の「X見ました」が2割を占める。オフラインとSNSの波及効果をROIに組み込む。

2-4. オフライン(イベント・展示会・DMなど)

特徴:接触密度が高く、信頼構築に強い。特にB2Bでは依然重要。

  • 強み:体験価値、直接対話、ブランド信頼

  • 弱み:コストが高い、スケーラビリティに欠ける

ROI測定方法

  • リード獲得単価(CPL)

  • 展示会後3カ月以内の商談化率・受注率

  • 顧客単価と契約期間の比較(オンラインリードとの差分)

最新事例

  • B2B SaaS:展示会リードはオンラインより獲得単価が2倍高いが、受注単価は1.5倍、契約期間は+30%。結果的にROIはオンラインと同等以上。

  • Fintech:地域限定のワークショップを実施。CPAは高いが、紹介率が通常の2倍。

3. ROI測定の実務

3-1. CPAからLTVベースへ

  • CPAだけで判断すると「安いが解約率高い顧客」を大量獲得してしまう。

  • CAC回収期間(Payback)とLTV/CAC比で評価する。

3-2. チャネル横断でのROI計測

  • UTM管理+CRM統合が必須。

  • 「流入→初回購入/リード→継続利用」の全体を見ないと判断を誤る。

3-3. MMM(メディアミックスモデリング)の活用

  • 広告だけでなくSEOやオフラインを含めて「売上貢献度」を統計的に推定。

  • 海外ではMMM+軽量MTA(マルチタッチアトリビューション)のハイブリッド活用が主流。

4. ケーススタディ(広告・SEO・SNS・オフラインの実例)

理論だけでは腹落ちしません。実際に企業がどのように顧客獲得を行い、ROIを改善しているのか。ここからは 国内外の事例を掘り下げて解説 します。大事なのは「規模や業種に関係なく応用できる学び」を抽出することです。

4-1. 国内EC企業(広告中心から脱却した事例)

背景

  • ECの主力チャネルはリスティング広告。

  • CPC高騰により、CPAは年々悪化。

  • 広告依存度が売上の7割を超え、経営リスクが顕在化。

施策

  • YouTube Shortsに動画広告を展開。ブランド認知と商品理解を両立。

  • 並行して、SEOにリソースを再配分。ブログ記事・比較コンテンツを増加。

  • SNSではUGC(顧客レビュー動画)を二次利用。

成果

  • 半年で指名検索が前年比+30%。

  • 広告依存度は7割→5割へ低下。

  • LTV/CACが3.2まで改善。

学び 広告ROIが低下しても「脱広告」ではなく、広告を起点にブランド・SEO・SNSへ波及させる設計が有効。

4-2. SaaS企業(広告別にLTVを測定)

背景

  • Meta広告中心でリードは大量獲得。

  • ただし解約率が高く、LTVがCACを下回る。

施策

  • 広告チャネル別に「獲得顧客のLTV」を算出。

  • LinkedIn経由のリードはCPAが高いが解約率が低いことが判明。

  • 広告配分をMeta 70%→40%、LinkedIn 20%→50%へ。

成果

  • 全体のLTV/CACが2.5→3.8に改善。

  • Payback期間も14ヶ月→9ヶ月に短縮。

学び 広告のROIは「CPAの安さ」ではなく、LTV基準で評価すべき。

4-3. 国内人材系メディア(SEO強化)

背景

  • 求職者リード獲得を広告に依存。

  • 広告停止するとリード数が激減。

施策

  • 求職者の検索意図ごとにSEO記事を体系化。

  • ホワイトペーパーで「リード情報→顧客化」までの流れを設計。

  • オウンドメディアを月100本規模で運営。

成果

  • 半年でオーガニック流入+120%。

  • SEO経由のリードは広告より解約率が低く、LTVが1.4倍高い。

学び SEOは即効性がないが、「指名検索の増加」「LTV改善」まで見据えて評価するのが正しい

4-4. D2Cブランド(SNS活用)

背景

  • Instagram中心で集客していたが、競合の参入で広告効率が悪化。

施策

  • TikTokでUGCを促進。顧客が自然に商品を紹介する文化を作った。

  • UGCを広告に転用し、CTRを改善。

  • SNS→ECの動線をシンプル化。

成果

  • CPAが25%低下、CTRが40%改善。

  • SNSからの流入が全体売上の2割を超える。

学び SNSは「認知チャネル」で終わらせず、UGCを広告やSEOと掛け算することが鍵。

4-5. Fintech(オフライン施策)

背景

  • デジタル広告での獲得効率が限界に。

  • 特定地域でブランド認知が弱かった。

施策

  • 地域限定のワークショップを開催。

  • 参加者には初年度無料のオファー。

  • ワークショップ内容をSNS・ブログで再発信。

成果

  • CPAは広告より高いが、紹介率が通常の2倍。

  • SNSでのUGC拡散により間接効果が波及。

学び オフラインは単体でROIを測るのではなく、オンラインとの波及効果込みで評価することが重要。

5. 横断成功要因

単一のチャネルに依存している限り、顧客獲得戦略は持続しません。広告が効かなくなれば売上が急減し、展示会に頼りすぎればスケールに限界が出る。 ここで重要になるのが 「チャネル横断で成果を最大化する仕組み」 です。 横断戦略のカギは、仮説検証の文化・データ統合・組織デザイン。いずれも「一見地味」ですが、実務に落とし込むと驚くほど差が出ます。

5-1. 仮説検証の文化

  • 小さなテストを回し、勝ちパターンを横展開する。

  • 広告→SNS→オフラインと「学び」を転用。

5-2. データ統合

  • UTM管理+CRM統合で「広告と展示会リードのLTV比較」が可能に。

  • データが分断されると意思決定が「勘」になる。

5-3. 組織デザイン(RevOps)

  • 営業・マーケ・CSが同じ顧客KPIを見る。

  • SLA(応答基準)を明確化してボトルネックを潰す。

まとめ

横断成功のポイントは、派手な新施策ではなく 「学びをどう横展開するか」 に尽きます。広告の勝ちパターンをSNSに転用し、展示会の声をSEO記事に反映する。その積み重ねこそが、長期的にROIを底上げする唯一の方法です。

6. 失敗パターンと回避策

成功要因を学ぶことは大事ですが、同じくらい重要なのが 「失敗を避ける視点」 です。顧客獲得戦略の失敗は、往々にして「焦り」と「短期視点」から始まります。 ここでは、現場でよく見られる失敗パターンと、その回避策を整理します。

  • 広告依存:CPAが上がり続ける → チャネル依存度30%ルールを導入

  • SEO即効期待:数ヶ月で成果を求め撤退 → 指名検索増加を中間KPIに

  • SNSの短期評価:CV直結でROIを測定 → 波及効果まで含める

  • 展示会の名刺放置:獲得後のフォローアップ不足 → 3カ月以内の商談化率をKPI化

まとめ

失敗の共通項は「ROIを部分最適で測ってしまうこと」です。広告のCPAだけを見て安心したり、展示会の名刺数だけで成果と錯覚したり。 回避のコツは、「顧客の生涯価値」+「チャネル横断の学び」 を常にセットで見ること。失敗はゼロにはできませんが、致命傷は避けられます。

7. 90日実装計画

フレームや事例を学んでも、「明日からどう動けばいいの?」となりがちです。 そこでここでは、最初の90日で実務に落とし込む計画 を示します。小さく試しながら成果を積み重ねることで、戦略を“机上の空論”から“現場の武器”に変えていきます。

1〜2週

  • チャネル別ROIの現状把握(広告費、SEO流入、SNS指名検索、展示会CPL)

3〜4週

  • KPIツリーに「チャネル別LTV」を追加。

  • ダッシュボードに統合。

5〜8週

  • 広告クリエイティブABテスト、SEO記事投入、SNSキャンペーン、展示会テストを同時に実行。

9〜12週

  • ROIレポートを週次で回し、勝ち筋を拡大・負け筋を縮小。

まとめ

大切なのは、「小さく始めて、大きく育てる」 ことです。最初の90日で完璧を目指す必要はありません。 ROIのレポートを週次で回し、勝ち筋を少しずつ拡大していく。その積み重ねが1年後には大きな成果になります。

8. 未来の顧客獲得戦略

顧客獲得のルールは、今後さらに大きく変化します。AIの進化、クッキーレス、そしてサステナビリティ。これらは「一部の企業だけの課題」ではなく、すべての事業に影響を及ぼします。 ここでは、これからの顧客獲得戦略を左右する3つのテーマを展望します。

8-1. AI活用

  • 広告クリエイティブ生成、SEO記事自動構成、SNS投稿の最適化。

  • AIは「試行回数を増やす装置」として活用する。

8-2. プライバシー時代

  • クッキーレスで1stパーティデータが必須。

  • 文脈ターゲティングや会員基盤の活用が中心に。

8-3. サステナビリティ

  • イベントやオフライン施策は「環境配慮」も評価対象に。

  • ブランド価値と顧客獲得ROIの両方を意識する時代に。

まとめ

未来の顧客獲得は「テクノロジー適応力 × 社会的文脈理解」の掛け算です。AIで実験速度を上げ、プライバシー対応で信頼を得て、サステナビリティで選ばれる存在になる。 顧客獲得は単なるマーケティング施策ではなく、企業の存在意義を社会に示す行為に進化していくでしょう。

9. まとめ

ここまで、広告・SEO・SNS・オフラインを横断した顧客獲得戦略を見てきました。事例やフレームを並べると複雑に感じますが、結論はシンプルです。

顧客獲得戦略は単独のチャネルに依存するのではなく、広告・SEO・SNS・オフラインを横断して設計し、ROIをLTV基準で測定することが成功の鍵です。

  • 広告=短期効率

  • SEO=中期基盤

  • SNS=波及と認知

  • オフライン=信頼と高単価

ROIは必ず LTVベース で評価しましょう。

まとめ

顧客獲得戦略の要諦は次の3つに集約されます。

  • 短期効率(広告)・中期基盤(SEO)・長期認知(SNS/オフライン)を組み合わせること

  • ROIをLTV基準で測定すること

  • チャネル横断の学びを組織全体で共有し続けること

これを愚直に積み上げれば、獲得効率は改善し続け、持続的な成長のエンジンになります。

最後に

それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!

👉 次号では 「ブランドと顧客獲得の関係」 をテーマに、顧客獲得戦略は広告やSEOなど“目に見える施策”に意識が向きがちですが、実は ブランドの強さ がROIを大きく左右します。 なぜブランドがある企業は広告費を抑えながら顧客を獲得できるのか? どうすれば中小規模の事業でも「選ばれるブランド」を育てられるのか? 国内外の事例を交えながら、短期施策と長期ブランド投資をどう組み合わせるか を徹底解説していきます。ぜひご期待ください!

今回は、顧客獲得戦略の全体像に関してお届けしましたが、今後は企業や事業などの分析なども通じてお役立ち情報を発信していきます。

時間の許す限り、週1で頑張って配信していきたいと思っておりますので応援のほどよろしくお願いします。

ではでは。

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