小さな会社が「○○の会社」と覚えられるにはどうしたらいいのか?
長いので、ブラウザで開くと読みやすいです。
この記事で分かること
「○○の会社」は、会議室で考えて決めるものではなく、お客さまの言葉の中から選んで、あとから定着させるものだということ
お客さまの言葉を集め、90分の社内ワークで一言に絞り、すべての接点でそろえる、具体的な手順
呼び名を集めて分類し、候補を点数づけし、接点の直しを管理するExcelワークシート
水曜の要約:名乗りと呼び名は違う
水曜のニュースレターで、会社が名乗る言葉と、お客さまが呼ぶ言葉は違う、と書きました。名乗りは会社の内側で決まり、呼び名はお客さまが頼んだ場面から生まれる。会社の本当の位置を表しているのは、呼び名のほうです。そして「○○の会社」の○○は、他社との違いではなく、お客さまが思い出すきっかけと結びついた言葉であることのほうが大事だ、とも書きました。
水曜の最後に、お客さま3人に「紹介するとしたら何と言いますか」と聞いてみてください、とお願いしました。聞いてみた方は、3つの答えが手元にあるはずです。今日は、そこから先の話です。集めた言葉から、どうやって一言を選び、どうやって「○○の会社」として定着させるか。手順を最初から最後まで書きます。
よくある失敗:会議室でキャッチコピーを考えてしまう
「○○の会社と覚えられたい」と思ったとき、多くの会社が最初にやることは、会議室に集まって、キャッチコピーを考えることです。ホワイトボードに自社の強みを書き出し、競合と比べ、「製造業に強いデザイン会社」「中小企業の伴走パートナー」といった言葉を作る。
これは、たいてい失敗します。理由は単純で、会議室で考えた言葉は、お客さまの口から出てこないからです。

会議室の言葉は、社内の強みから出発します。「うちは製造業の案件が多い」「デザインには自信がある」。だから「製造業に強いデザイン会社」になる。嘘ではありません。でも、お客さまがその会社を紹介するとき、「製造業に強いデザイン会社だよ」とは言わない。お客さまが言うのは、「展示会の前日でも間に合わせてくれる会社」です。自分が助かった場面の言葉です。
会議室の言葉がお客さまの口から出てこないのは、お客さまがその言葉を聞いたことがないからではありません。その言葉が、お客さまの体験と結びついていないからです。どれだけ広告で繰り返しても、体験と結びついていない言葉は、紹介の場では使われません。
だから順番を逆にします。考えてから広めるのではなく、お客さまがすでに使っている言葉を集めて、その中から選ぶ。 一言は、考えるものではなく、選ぶものです。
無料で渡す道具:呼び名を集める7つの場所
お客さまの言葉は、わざわざ調査しなくても、社内のあちこちにすでに落ちています。集める場所を7つ挙げます。
1. 紹介メール。
お客さまが知り合いにあなたの会社を紹介したとき、その紹介メールに書かれた一言。CCで届いたもの、転送されてきたもの。ここにある言葉が、一番そのままの呼び名です。
2. 問い合わせフォームの自由記述。
「どのようなご用件ですか」の欄に、お客さまが自分の言葉で書いたもの。「急ぎで展示会の資料をお願いしたい」「知人から、御社なら間に合うと聞いて」。
3. 商談の議事録。
初回の商談で、お客さまが「御社は○○の会社だと聞いて」と言った、その○○。営業が記録していれば残っています。
4. レビュー・口コミ。
取引先の紹介ページ、口コミサイト、お客さまが自社のサイトで書いてくれた事例。
5. SNSでの言及。
会社名で検索して出てくる、お客さまや取引先の投稿。
6. 検索の言葉。
自社サイトにたどり着いた人が、何と検索してきたか。会社名以外の言葉で来ている人がいれば、それはお客さまが頭の中で結びつけている言葉です。
7. 直接聞いた言葉。
水曜の「3人に聞く」です。
集めるときに、もう一つ目を向けてほしいものがあります。お客さまが言わなかった言葉です。会社のホームページの一番上に書いてある言葉が、集めた言葉の中に一度も出てこなかったら、それは、お客さまにとってその言葉が存在していない、ということです。がっかりする結果ですが、一番早く分かる、一番大事な事実でもあります。
集めるときのルールが一つだけあります。社員の言葉を混ぜない。 営業が「お客さまはこう言っていると思う」と書いたものは、お客さまの言葉ではありません。お客さまが実際に口にした、または書いた言葉だけを集めます。これを混ぜた瞬間、また会議室の言葉に戻ります。
絞ることへの恐怖に、先に答える
ここまで読んで、こう思った方がいるはずです。
「一言に絞ったら、それ以外の仕事が来なくなるのではないか。」
小さな会社ほど、この恐怖は切実です。いろいろな仕事を受けて成り立っているのに、「展示会の会社」と絞ったら、展示会以外の仕事が減るのではないか。
答えは、覚えてもらう入口を絞ることと、売る範囲を絞ることは、別だということです。
「展示会の前日でも間に合わせる会社」として覚えられた会社に、展示会の仕事しか来ないわけではありません。展示会で助かったお客さまは、次にパンフレットが必要になったとき、その会社を思い出します。入口が一つはっきりしていると、お客さまはその入口から入ってきて、中にあるほかの商品も見ていく。入口がぼんやりしていると、そもそも誰も入ってこない。
身近な例で言えば、「子どもの誕生日といえば」のケーキ店に、誕生日のケーキしか売れないわけではありません。誕生日で店を知った家族は、クリスマスにも、手土産にも、その店を思い出します。入口は誕生日の一つ。売っているものは、店にある全部。入口と売り場は、別のものです。
絞ることで減るのは、売る範囲ではなく、「何の会社か分からない」という理由で素通りされる機会です。
無料パートだけで、今日できること
ここまでで、有料パートを読まなくても始められることがあります。
7つの場所のうち、すぐ見られるもの(紹介メール、問い合わせの自由記述、商談メモ)を開いて、お客さまの言葉を10個書き出す
その10個を、「何の業界か」「何をしてもらっているか」「いつ・どんなときに頼むか」の3つに分けてみる
「いつ・どんなときに」の言葉が一つでもあれば、それが候補の第一号
この続きで渡すもの
有料パートでは、次のものを渡します。
Excelワークシート(呼び名を集めて5つの種類に分類し、候補を3つの基準で点数づけし、接点の直しを管理する。Googleスプレッドシートでも動く)
90分の社内ワークの台本(誰を呼ぶか、何分で何をするか、どう絞るか、どう記録するか)
集めた言葉を分ける5つの種類と、一言を選ぶ3つの基準
「○○の会社」に整える3つの型
決めた一言を12の接点でそろえる一覧と、抜けやすい接点
紹介してくれる人に渡す一言と紹介文の作り方
社長の一言で覆らないようにする記録の残し方
一言をそろえたことで事業が伸びた話と、定着を確かめる3つの数字
お客さまの言葉を10個書き出してみると、次に困るのは「この中から、どうやって一つに決めるのか」のはずです。その決め方から書いていきます。