2026年9月までのブランディング・マーケティング・PR事例、最新のトレンド動向を振り返ってみようじゃないか。

2026のはじめから、9月のシルバーウィールまでのまとめとしてご覧ください。
山口偉大 2026.09.23
誰でも

今年いちばん、手が止まった数字があります。

AIを導入した日本企業のうち、業務が効率化したと答えたのは91.6%。売上や利益が向上したと答えたのは、3.9%。

IPAが2026年7月に公表した「DX動向2026」の数字です。1,799社に聞いた調査で、顧客満足が向上したという回答も4.5%にとどまりました(参考:https://www.ipa.go.jp/pressrelease/2026/rcu1hd0000016yh4-att/press20260716.pdf )。

9割が「速くなった」と言い、4%弱しか「儲かった」と言わない。

この断層が、2026年という年をよく表していると思っています。道具はものすごい勢いで良くなった。社内の作業は確実に速くなった。でも、顧客との関係は、ほとんど変わっていない。

年の3分の2が過ぎたところで、今年の事例とデータを一通り洗い直しました。成果が数字で確認できるものと、逆に効かなくなったものを、両方集めています。

そこから見えたことを、先に一行で書きます。

今年効いたのは、顧客がすでに持っている習慣の言葉へ「翻訳」した会社でした。効かなくなったのは、前提を隠すことで成立していた手法でした。

この記事で「翻訳」と呼ぶのは、自社の提供物を、顧客がもう知っている習慣の言葉に置き換えることです。後半では、その宛先が人からAIに変わった話もします。

翻訳と、前提の開示は、厳密には別の動作です。ただ、どちらも「顧客が判断できる状態にして差し出す」という一点では同じ向きを向いています。開示は、翻訳の前提条件だと考えてください。隠したまま翻訳しても、それは言い換えではなく言い繕いになります。

翻訳と、前提の開示は、厳密には別の動作です。ただ、どちらも「顧客が判断しやすい状態にする」という一点で繋がっています。わかる言葉にするのが翻訳、わかるために必要な事実を伏せないのが開示。 この記事では、その両方を扱います。

いつもより長くなりますが、保存版のつもりで書きます。

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第1部|崩れたもの

隠す設計が、持たなくなった

今年は、規制当局が目立って動いた年でした。

6月、公正取引委員会が高光製薬に措置命令を出しました。企業がハッシュタグや記載内容を指定し、商品と報酬を提供した投稿が、広告と明示されていなかった。いわゆるステルスマーケティングです(参考:https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2026/jun/260629tokutei.html )。

同じ6月、ゲオストアの「最高買取価格」表示にも措置命令が出ています。実際にその価格が適用されるには厳しい条件があり、引用された商品では実売平均が表示額の約3割から6割台にとどまっていた(参考:https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2026/jun/260611geo.html )。

9月には、消費者庁が葬儀の「家族葬10万円」表示を有利誤認と判断しました。実際には上位プランや会員条件が必要だった(参考:https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms209_260918_01.pdf )。

業種も手口もバラバラです。ただ、並べてみると共通点が浮かびます。

どれも、顧客が判断するのに必要な前提を、伏せることで成立していました。

広告であること。条件があること。中身がないこと。

規制以外でも同じことが起きています。5月、ウテナが生成AIを使った広告動画を、既存作品との類似性やAI利用への批判を受けて削除し、交通広告も撤去しました。同社は、法的な確認はしたものの、文化やファンへの配慮が不足していたと説明しています(参考:https://www.utena.co.jp/pdf/20260506_moisture_2.pdf )。

YouTubeも、収益化ポリシーで量産・反復コンテンツの扱いを明確にしました。テンプレートを差し替えるだけの動画は、収益化の対象外になっています。

ここで、よくある解釈を一つ否定しておきたい。

「規制が厳しくなった」という話ではないと思っています。

変わったのは、検証コストのほうです。 誰でも比較サイトで実売価格を照合できる。SNSで同じ商品の他の口コミを引ける。AIに聞けば、元ネタとの類似も指摘される。隠したことがバレるまでの時間が、極端に短くなった。

情報の非対称性を前提にした設計が、単純に持たなくなったということです。

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順位を取っても、人が来ない

もう一つ、静かに崩れたものがあります。検索です。

Pew Research Centerが2025年7月に公表した調査によると、検索結果にAIによる要約が表示された場合、通常のリンクがクリックされる割合は8%。要約が出ない場合は15%でした。要約の中に置かれたリンクに至っては、クリックは1%です(参考:https://www.pewresearch.org/short-reads/2025/07/22/google-users-are-less-likely-to-click-on-links-when-an-ai-summary-appears-in-the-results/ )。

調査は昨年のものですが、AI要約の表示範囲はその後さらに広がっています。状況が戻る気配は、いまのところありません。検索結果のページで、答えが完結するようになりました。

これも、実は隠蔽の一種が終わった話だと考えています。

上位表示というのは、ある時期まで中身の薄さを覆い隠せる仕組みでした。狙ったキーワードで1位を取れば、内容が凡庸でも人は来た。順位が、品質の代理になっていた。

その覆いが外れた。要約で答えが出てしまう記事は、そもそもクリックされません。クリックされるのは、要約では代用できない何かを持っている記事だけになりました。

新聞も同じ方向に動いています。日本新聞協会の統計では、総発行部数は2024年の約2,662万部から、2025年は約2,487万部へ。1年で6.5%あまり減りました(参考:https://www.pressnet.or.jp/data/circulation/circulation01.php )。

掲載されること自体の価値が消えたわけではありません。ただ、掲載が流入を保証しなくなった。

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隠せない世界で、何が残るのか

ここまでをまとめると、2026年に効かなくなったのは、媒体でも表現でもありませんでした。隠すことを前提にした設計です。

では、隠せないなら、何が残るのか。

残る手は、ひとつしかありません。わかりやすく、差し出すこと。

そして実際、今年成果を出した会社は、判で押したように同じことをしていました。

***

第2部|効いたもの

コンビニに行く理由が、ひとつ増えた

ファミリーマートの「コンビニエンスウェア」が、5周年を迎えました。2月には初の全国TVCMも始まっています。

同社の発表では、売上は毎年前年比130%超で推移し、2025年度は約200億円を見込むとされています(参考:https://www.family.co.jp/company/news_releases/2026/20260212_01.html )。

この事例、「コンビニが服を売って当たった」と要約されがちなんですが、それだと肝心なところが落ちます。

この会社がやったのは、来店理由の増設です。

もともとコンビニは「必要なものを、すぐ買う場所」でした。下着や靴下も置いてはいたけれど、それは旅先や急な出張で困ったときの緊急避難です。買う側も「仕方なく」買っていた。

そこに、デザイナーとの共同開発、フェスとのコラボ、人気IPとの企画を重ねて、「コンビニで日常着を選ぶ」という新しい用途を置いた。店舗も物流も、これまで通りです。変えたのは、来る理由の数だけ。

新しいカテゴリーを作ったわけではありません。「服を買う」という誰もが知っている習慣を、コンビニという既存の接点に接続した。それだけです。

***

同じことを、3社がやっていた

今年の事例を並べていて驚いたのは、まったく違う業種が、同じ動作をしていたことでした。

メルシャンは、ワインとRTD(缶チューハイなどの低アルコール飲料)の間に商品を置きました。ワインを理解して選ぶ、という負荷を外して、味の名前と飲む場面をRTDの言葉で説明した。キリンの発表では、発売から10か月で累計60万本です(参考:https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2026/0526_01.html )。

Zoffと資生堂は、眼鏡を美容の文脈に置きました。視力矯正の道具ではなく、肌映りや時短美容の話として説明した。

ワークマンは、作業着で積み上げた「機能は本物だ」という信頼を、リカバリーウェアに横流ししました。回復という新しい概念を説明するのではなく、既存の信頼のほうを持ってきた。

4社とも、新しいカテゴリーを作ろうとしていません。顧客がすでに持っている習慣の隣に、新しい理由を置いただけです。

***

学習コストを、どちらが払うか

なぜ、翻訳が効くのか。

新しい概念を打ち出すやり方が悪いわけではありません。ただ、そのやり方には、見えないコストが乗ります。顧客に学習させるコストです。

「リカバリーウェアとは何か」から説明する会社と、「作業着で信頼されているあの会社が作った」で済ませる会社。前者は、顧客に時間と集中力を要求します。

ここで冒頭の話と繋がります。

情報が溢れた分だけ、顧客の学習容量は減っています。 生成AIで誰もが情報を出せるようになり、受け取る側の処理能力は変わらないまま、供給だけが何倍にもなった。理解を求める設計は、届く前に離脱します。

だから、翻訳コストを企業が引き受ける。顧客に学ばせるのではなく、こちらが顧客の言葉まで降りていく。今年成果を出した会社の共通点は、突き詰めるとここだったと思っています。

***

店舗網のない会社は、何を橋にするか

ここまで挙げた4社は、全国店舗網や大型ブランドを持っています。読んでいて「うちとは前提が違う」と感じた方が多いはずなので、そこに触れておきます。

橋を架けるのに、大きな資産は要りません。必要なのは、顧客がすでに持っている習慣を、ひとつ見つけることです。

中堅・中小の会社が使えるものは、だいたい次の3つに集約されます。

顧客の職業習慣。 その人が毎日必ずやっている業務動作。たとえば、建設会社向けの商品なら「現場の朝礼」、美容室向けなら「来店前のカウンセリング」。すでに必ず発生している場面に、自社の商品を差し込む。

地域の生活動線。 通勤、買い物、送り迎え。駅前のクリーニング店が保育園の送迎ルートに合わせて受付時間を変える、といった話です。商品を変えず、動線に合わせる。

既存取引先の購買文脈。 すでに何かを買っている理由の隣に、次を置く。印刷会社が名刺の受注時に採用資料の話をするのは、顧客の頭が「人を採る」に向いている瞬間だからです。

ファミリーマートがやったのは、規模こそ違いますが、構造としては3つ目です。「すでに来ている人が、ついでに買える理由」を作った。店舗数が16,000あるか1つしかないかは、この構造自体には関係ありません。

最近、支援先でこれがうまくいった例があります。

自社でSaaSを提供しながら、あわせてBPO(業務の受託)もやっている会社でした。もともとは「マーケティングの仕組み化を支援します」という説明をしていて、これが伝わらない。仕組み化という言葉が、顧客の側に存在しないからです。

そこで、入口を入れ替えました。顧客がすでに困っている業務、つまり毎月手作業でやっている集計や配信の話から入り、それをBPOで引き受ける。続けているうちに、自社のSaaSへ移っていく。 商品は何ひとつ変えていません。変えたのは、どの習慣の隣に置くかだけです。

面白かったのは、BPOが翻訳装置として働いていたことでした。顧客は「ツールを導入する」という新しい行動を学ばなくていい。いつも通り、仕事を渡すだけです。渡した先で、いつの間にか仕組みに乗っている。学習コストを、BPOという形で会社側が引き受けていた。

店舗網も大型IPもない会社が橋を架けるなら、こういう「顧客が学ばなくていい入口」を持てるかどうかが効きます。

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支援先で起きた、翻訳のひとつの形

今年、ある支援先で、この翻訳がうまくいった例がありました。

その会社は、自社でSaaSを提供しながら、BPO(業務の受託)もやっています。よくある話ですが、この二つが社内では別の事業として扱われていて、顧客への説明も別々になっていました。「うちのSaaSはこういう機能で」「BPOではこういう業務を代行して」と。

顧客からすると、聞かされているのは、道具の説明と、人手の説明です。自分の仕事とどう繋がるのかは、自分で考えないといけない。

そこで、説明の単位を変えました。機能でも、業務範囲でもなく、顧客がすでに困っている業務の流れを単位にして、「この工程はSaaSで自動化し、ここから先は人が引き取ります」という一本の話にした。売り物の構成は、何も変えていません。

この会社がやったのは、まさに翻訳です。自社の提供物(SaaSとBPO)を、顧客がすでに持っている習慣(日々の業務の流れ)の言葉に置き換えた。学習コストを、顧客から自社へ引き取ったと言ってもいい。

ここで効いたのは、SaaSとBPOを両方持っていたことそのものではありません。両方あることを、顧客の言葉で一本につないだことです。持っているものが同じでも、説明の単位が「自社の部門」のままだと、この効果は出ません。

***

金も、同じ方向に動いた

ここまで事例の話をしてきましたが、予算の動きも同じ方向を向いています。

電通の「2025年 日本の広告費」によると、総広告費は8兆623億円。そのうちインターネット広告費が4兆459億円となり、構成比50.2%と、初めて半分を超えました(参考:https://www.dentsu.co.jp/news/release/2026/0305-011003.html )。動画広告は前年比121.8%で初の1兆円超え、ソーシャル広告も118.7%と二桁成長です。

これを「テレビ対ネット」の勝敗として読むと、本質を外すと思っています。

動いた先に共通するのは、効果を説明できる媒体だということです。誰に届いて、何人が見て、そのうち何人が買ったのか。動画も、ソーシャルも、購買データと結びついたリテールメディアも、そこを数字で示せる。

つまり広告の世界でも、説明できないものから、説明できるものへ金が移った。ここまで書いてきた「前提を開示する」という話と、根は同じです。

***

金も、同じ方向に動いた

今年3月、電通が発表した「2025年 日本の広告費」で、ひとつの節目が来ました。インターネット広告費が4兆459億円となり、総広告費に占める構成比が50.2%と、初めて過半数を超えました(参考:https://www.dentsu.co.jp/news/release/2026/0305-011003.html )。

これを「テレビ対ネット」の勝敗として読むと、本質を外します。マスコミ四媒体は前年比98.4%で、ほぼ横ばいでした。急落したわけではありません。

動いたのは、効果を説明できる媒体のほうへです。

内訳を見ると、動画広告が前年比121.8%で初めて1兆円を超え、ソーシャル広告が118.7%。運用型広告が媒体費の88.7%を占めています(参考:https://www.dentsu.co.jp/news/release/2026/0305-011004.html )。いずれも、誰に届いて何が起きたかを説明しやすい形式です。

広告予算も、説明責任を果たせる場所へ移動している。 第1部で書いた「隠せなくなった」という話と、これは同じ流れの別の現れ方です。出稿する側も、社内に対して効果を説明できないものには、金を出しにくくなっています。

***

第3部|AIが分けたもの

AIは、翻訳の前半だけを引き受けた

冒頭の数字に戻ります。

効率化91.6%に対して、顧客満足4.5%、売上・利益3.9%。

IPAの調査では、AIの利用用途の上位は、要約82.5%、文書作成80.5%、情報検索77.0%でした。一方で、事業の中身に踏み込む用途は1割前後にとどまっています。

この内訳が、断層の理由を説明していると思います。

AIが引き受けたのは、翻訳の前半だけなんです。

集める、要約する、整理する。ここまでは驚くほど速くなりました。でも翻訳というのは、集めた後に「誰に、どの言葉で、どの順番で差し出すか」を決める作業です。そこはまだ、人に残っている。

社内の作業が速くなっても、顧客との関係が変わらないのは、当然といえば当然でした。速くなったのは、顧客に届く手前の工程だけだからです。

海外では、前年に一度振り切った企業が戻ってきています。2025年、Klarnaは顧客対応の大部分を自動化し、大きなコスト削減を公表しましたが、その後、品質への懸念から人間の対応を再強化しました。CEOはコストを重視しすぎたと認めています(参考:https://www.businessinsider.com/klarna-reassigns-workers-to-customer-support-after-ai-quality-concerns-2025-9 )。

これを「AIは使えない」と読むのは早い。定型処理は置き換わりました。戻したのは、例外と、感情と、関係の修復です。線を引く場所が分かった、という事例だと思っています。

***

翻訳の宛先が、人からAIに変わった

もう一つ、今年の後半にはっきりしてきたことがあります。

検索が答え画面になった以上、企業の情報は人に読まれる前に、AIに読まれます。 そしてAIが引用しなければ、そもそも人の目に触れません。

つまり、PRの成果が変わりました。掲載されることから、引用される状態にあることへ。

ここでやることも、結局は翻訳です。宛先が人からAIに変わっただけで、動作は同じ。自社にしかない一次情報を持ち、それを機械が読み取れる形に整えて、出典として辿れるようにしておく。

要約で代用できる情報しか持っていない会社は、AIに引用されません。逆に、自社の現場でしか取れないデータや、具体的な数字を持っている会社は、要約の材料として選ばれます。

前半で書いた「順位で中身の薄さを隠せなくなった」話と、これは同じことを別の角度から言っています。

***

第4部|この見立ての限界

ここまで「翻訳と隠蔽」という軸で書いてきましたが、この見方には弱いところがあります。気持ちよく整理できる話ほど、事実を軸に合わせにいっている可能性があるので、正直に書いておきます。

企業秘密と、隠蔽は違います。

原価も、調達先も、アルゴリズムも、開示する必要はありません。問題なのは、顧客の判断を歪める前提を伏せることです。広告であること、条件があること。この線引きをせずに「隠すな」と言うのは乱暴です。

生存者バイアスがあります。

この記事に出てくるのは、成果を公表した会社だけです。同じように隣接カテゴリーへ翻訳して、うまくいかなかった会社は発表しません。だから見えない。「翻訳した会社が勝った」ではなく、正確には「勝った会社の多くが翻訳していた」です。

因果ではなく、相関です。

ファミリーマートの前年比130%超には、TVCM以前の数年の積み上げが含まれます。翻訳したから伸びた、と単純化はできません。むしろ、伸びている事業が翻訳もしていた、という順序のほうが実態に近いはずです。

法令違反は、設計思想の問題ではありません。

措置命令を受けた各社は、表示規制に違反したのであって、翻訳が下手だったわけではない。僕はそれを「隠す設計」という枠で読みましたが、それはあくまで僕の解釈です。

それでも、この軸を使う理由があります。

翻訳は、勝ちを保証する設計ではありません。負けを減らす設計です。 隠さず、顧客の言葉に置き換えておけば、規制でも、AI検索でも、比較サイトでも、足をすくわれにくい。今年の事例を見ていて、そこは確からしいと感じました。

***

隠さないことは、コストではなく設計

ここまでの話は、結局、表と裏です。

翻訳は、前提を開示する行為。隠蔽は、前提を伏せる行為。同じ「顧客との情報のやりとり」を、どちら向きに設計するかという違いでしかありません。

そして2026年に起きたのは、伏せる側の選択肢が、規制とAIと検証コストの低下によって、静かに消えていったということでした。

僕がこのニュースレターで「素材を編集して、場と意思決定を作る」と書き続けているのは、こういうことです。自社の事実(素材)を、顧客がわかる言葉に編集して、判断できる状態で差し出す。

ただ、さっき書いたとおり、これをやれば伸びる、とまでは言えません。翻訳した会社が全部うまくいったわけではないし、伸びた理由が翻訳だけだったとも言えない。

それでも、今年の事例を並べた限りでは、こう言えると思っています。隠して成立していた設計は、確実に賞味期限を迎えた。 開示と翻訳は、勝つための必勝法ではなく、これから長く戦うための前提条件になりつつある。

***

今週やること

読んで終わりにならないよう、3つだけ置いておきます。

1. 自社が顧客に開示していない前提を、3つ書き出す。 価格の条件、納期の実態、成果の前提。何でもかまいません。

2. そのうち、開示しても損しないものを1つ選ぶ。 たいてい1つはあります。開示しないまま来た理由が「慣習」だけ、というものが。

3. 自社の商品を、顧客の既存習慣の言葉で言い換える。 「うちの商品は、お客さまがすでにやっている〇〇の隣にあります」。この一行を書いてみてください。書けないなら、まだ翻訳できていません。

***

点検してみてほしいこと

当てはまる数を数えてみてください。

□ 自社の説明に、顧客が知らない用語が3つ以上出てくる

□ 価格や条件の但し書きが、意図的に目立たない場所にある

□ 検索順位は取れているが、問い合わせは増えていない

□ AIを導入したが、効果が社内の効率化にとどまっている

□ 自社にしかない一次情報を、外に出していない

□ 自社の説明が、顧客の業務の流れではなく、自社の部門や商品構成の単位になっている

最後の問いかけ

あなたの会社が顧客に伝えていないことのうち、隠す必要が本当にあるものは、いくつありますか。

***

今年の残り3か月で、何かひとつ変えるとしたら。新しい施策を足すより、いま伏せている前提をひとつ開示するほうが、たぶん効きます。

もし「うちは顧客に伝わっていない気がする」と感じたら、一度話しにきてください。あなたの会社の説明を一緒に読んで、どこが翻訳できていないかを探すところから、お手伝いします。売り込みは、しません。

「こんなこと聞いていいのかな」というくらいで、ちょうどいいです。

***

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ではでは。

— 山口偉大 / Yamaguchi Takehiro

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