週末トレンド便|AIで作った広告には、74%が「言ってほしい」と答えた

――広告は画面の外へ出て、AIは接点の中へ入った週。
山口偉大 2026.10.25
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今週の要点

  • 広告の「次の動作」が、視聴でもクリックでもなくなりました。返信する、ゲートをくぐる、コートの破片を手に取る。今週の施策は、画面の外の行動を設計していました

  • AIは、画像を1枚作る道具から、ブランドの情報を広告・店舗・決済・顧客データへ運ぶ接点の中へ入りました。GoogleもZoomもSalesforceも、同じ週にそこへ動いた

  • そして見る側は、AIで作った広告に「言ってほしい」と74%が答えています。作る側の97%がAIを使い、見る側の78%は人が作った広告を望む。この差を埋めるのは、性能ではなく開示と方針でした

***

10月20日の正午、日本マクドナルドの公式Xが、一つの投稿をしました。

「午後2時から 390ペア 新登場!」。参加の条件は、公式アカウントをフォローして、その日の指定ハッシュタグを付けて、投稿にリプライすること。ハッシュタグは日替わりで、20日は「#マックに390ペアが新登場」、21日は「#390ペアでニッポンのひと休みに革命を」、22日、23日と続きます。4日間で、1,000円分のマックカードが抽選で合計100名。

仕組みだけ見れば、珍しくありません。でも、よく見ると、広告を見た人の「次の動作」が、視聴でもクリックでもなく、返信として設計されています。しかも、リプライの本文にもハッシュタグを入れる。見た人が、自分の言葉で、自分のタイムラインに、商品名を書く。

同じ週、Canva Japanが国立競技場(MUFGスタジアム)のデザインパートナーになり、西側のDゲートが11月1日から「Canvaゲート D」になると発表されました。契約は2026年4月から3年。ニューヨークでは、Michelob ULTRAが、ニックスが優勝したNBAファイナルのコートの破片を埋め込んだボトルオープナーを、5つの区のバーテンダーに配り始めました。

広告が、画面の外に出ています。返信、ゲート、手に取れる物。そして同じ週、反対の動きも起きていました。GoogleはGeminiに中小企業向けの機能を足し、Google広告やビジネスプロフィール、Shopify、Canvaとつないで、ブランドの情報を読み込ませた画像や資料を作れるようにした。Zoomは会議・通話・チャット・文書をひとつの文脈として扱う層を発表し、SalesforceはBrazeを56.6億ドルで買うと決めた。AIが、接点の中に入った週でもあります。

この2つの動きが同じ週に重なったとき、ひとつの数字が間に立ちます。AIで作った広告には開示してほしいと答えた人、74%。今週は、その数字から読んでいきます。

今週の3本

1. 日本マクドナルド「390ペア」、Canva×国立競技場、Michelob ULTRA(10/19〜23)
3つとも、広告の「次の動作」を画面の外に置いています。マクドナルドは、見た人に自分の言葉で商品名を書かせる。Canvaは、入場者が毎回くぐるゲートに名前を置く。Michelob ULTRAは、優勝のコートの破片をバーテンダーの手に渡す。露出の量ではなく、人が何をするかで設計されている点が共通です。

マクドナルド
@McDonaldsJapan
10月21日(水)午後2時から

『390ペア』新登場!!
2026/10/15 06:30
3272Retweet 30468Likes

2. Google「Gemini for small business」、Zoom「Unified Context Layer」、Salesforce×Braze、Resonate「Digital Twins」(10/20)
同じ日に4つ、AIが「作る道具」から「接点の中」へ入る発表が出ました。Geminiはブランドキットを読み込んで広告やビジネスプロフィールまでつなぎ、Zoomは会議と文書と外部アプリを一つの文脈にし、SalesforceはBrazeの「行動に合わせて即時に通知を送る」仕組みを買い、Resonateは2億5,000万人分のIDに紐づくデータから「仮想の回答者」を作り、5日で広告の配信先に変える。AIが、顧客理解と配信のあいだに座り始めています。

3. Cint「AI広告の開示」調査、Canva×Harris Poll「State of Marketing & AI」(10/20)
米国の約1,000人のうち74%が、ブランドやクリエイターはAIの使用を開示する義務があると答え、44%は開示しなかったと知れば信頼が下がると答えました(Cint)。一方、7か国のマーケティング責任者1,415人の97%が日常の制作でAIを使い、消費者3,547人の78%は「AIのほうが良い広告を作れても、人が作ったものを見たい」と答えています(Canva×Harris Poll)。作る側と見る側の差が、数字で出た週です。

3本を並べると、こう見えます。広告は画面の外へ出て、生活者の行動を直接設計し始めた。AIは画面の内側で、制作から配信までを一気通貫でつなぎ始めた。そして生活者は、その両方に対して「誰が、どう作ったのか」を知りたがっている。

前々回の便で、MetaがAIに「公開・送信・支出」だけは任せなかった話を書きました。前回は、ラベル・基準・権限という信頼の3つの形。今週は、その信頼を生活者の側から数字で測った週だと思っています。

今週の数字:74%

Cintが10月20日に公表した調査です。2026年8月、米国の約1,000人に聞いたもので、Advertising Weekとの共同。Cint自身が調査会社なので、商業的な関心がある発表として読みます。重み付けや質問文は公表されていません。

AIの使用を開示する義務があると答えた人が74%。開示されていなかったと知れば信頼が下がる人が44%。信頼を失う理由の上位は「開示のないAI・合成メディア」43%で、「信用できないインフルエンサー」38%、「広告と分からないスポンサー投稿」37%より上にきています。AIで生成された人物を広告で見たくない人は46%で、試した中でいちばん嫌われた表現でした。

CanvaとHarris Pollの調査は、7か国(米・英・豪・仏・独・日・印)で、従業員500人以上の企業のマーケティング責任者1,415人と、消費者3,547人に聞いています。責任者の97%がAIを日常の制作に使い、99%が2026年に投資を増やす。消費者の78%は人が作った広告を望み、70%は「何かが足りないので、だいたい見分けがつく」と答えています。

注目したいのは、その先です。68%は「役に立つ、自分に合う広告になるなら、AIが入っていても気にしない」。74%は「会社に正式な方針があれば、AI広告に安心できる」。信頼を作る要素として挙がったのは、データの保護53%、AI使用の開示52%でした。

数字を並べると、反AIの話ではないことが分かります。生活者は、AIが入ること自体を拒んでいない。知らされずに入っていることを拒んでいる。そして、方針があれば受け入れる。前回の便で書いたYouTube Musicのラベルと同じ構造が、調査の側からも出てきました。

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続きは、17365文字あります。
  • 広告の「次の動作」を、画面の外に置く
  • AIが、制作から「接点の中」へ入った日
  • 作る側の97%と、見る側の78%のあいだ
  • 失敗例:マスコットの羊を、著作権で守ろうとして広がった
  • AI経由の訪問者は滞在が45%長い。測れている会社は8%
  • 今週の編集済みニュース20本(うち日本9本)
  • 世の中の動き:中吊り広告が、全線から消える
  • 3本を並べると、見えてくること
  • あなたの会社で、今週確かめる3つのこと
  • 来週、見ておくこと
  • 今週の要点

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