週末トレンド便|承認なしでAIに買わせていい人は、7%

――AIが比べ、選ぶところまで来た週に、最後に「これを買う」と確かめる場所がどこに残るかを読む。
山口偉大 2026.11.07
誰でも

今週の要点

  • 買い物のどこかでAIを使った人は8割。それでも、承認なしでAIに買わせていい人は7%でした。生活者は、比べるところまではAIに任せ、最後の「買う」は自分で確かめようとしています

  • サイトに来る「人ではない訪問者」が増えています。広告主の側では、毎年当然のように上乗せしてきたGoogle検索広告の予算を、クリックの先を確かめてから出す動きが出てきました

  • データを大きくつなぐ発表と、長く続いた仕組みを畳む発表と、止まった規約が同じ週に並びました。問われているのは、つなぐ規模より、つなぎ方を説明できるかどうかです

***

たとえば、AIに「来週末の旅行に合う、雨でも歩ける靴を探して」と頼む。AIは候補を3つに絞り、サイズと在庫と価格を並べて、「この中なら、これです」と言う。そこまでは、もう多くの人がやっています。

では、そのまま「買っておいて」と頼めるか。

ECの不正対策の会社Riskifiedが、2026年9月に米国、英国、日本、メキシコ、ブラジルの5,100人に聞いた調査があります。買い物のどこかでAIを使った人は80%、何らかの形でAIに購入を任せてもいいという人は74%でした。ところが任せ方を聞くと、承認なしでAIに買わせていいという人は7%しかいません。43%は、購入のたびに自分で承認したいと答えています。

出典:https://www.riskified.com/press/agentic-commerce-pulse-consumer-survey-november-2026/
出典(同社の発表を掲載した記事。同社提供の広告記事):https://www.israeldefense.co.il/en/node/72217

ここでいう承認は、カード会社が決済を通す「承認」ではありません。本人が「これを買う」と確かめて、ボタンを押すことです。

比べるのは任せる。選ぶのも、ほとんど任せる。でも、最後の一押しは自分でしたい。

同じ週、企業の側では、AIに読まれ、比べられ、選ばれるための準備が一斉に進みました。Microsoftはサイトに来たAIエージェントの動きを見る機能を出し、広告会社のPublicisはデータ接続のLiveRampを手に入れ、Amazonは広告の計画から分析までをAIが手伝う機能を東京で発表しました。

AIに選ばれる準備は、急速に整っています。では、お客さまが最後に押すボタンの準備は、どこまでできているでしょうか。

今週の3本

1. AIで買い物をする人は増えた。でも、最後の一押しは手放していない(Riskified、McKinsey)
Riskifiedの調査で、AIツールの中で実際に購入まで終えた人は11%でした。McKinseyの11市場・約2万1,000人の調査でも、AI利用者のうちAIで購入まで終えた人は14%で、McKinseyによると回答者全体では約9%です。使う人と、買わせる人のあいだには、まだ大きな段差があります。

2. サイトに来る、人ではない訪問者(Microsoft Clarity、Digiday)
Microsoft Clarityの分析では、AIエージェントの週ごとのセッションが、3週間でほぼ倍の約200万件に近づきました。同じ週、Digidayは広告の買い手18人に取材し、Google検索広告の予算の一部を、クリックの先で商談や売上が生まれたかを確かめてから出す動きを報じています。ただし1プロジェクトあたりでは4週間で平均約23件で、量より増え方の速さを読む数字です。「上乗せの10〜20%が、以前ほど自動では出なくなっている」という代理店の声もあります。

3. つなぐ、畳む、止まる(Publicis、Smart-C、Meta)
Publicisは約22億ドルのLiveRamp買収を完了しました。アドウェイズの子会社は、2004年から続いたアフィリエイトのSmart-Cを11月30日で終えます。Metaは、事業者のサイトの内容を取得できるようにする規約の変更を止めました。データを渡す話は、企業どうしの信頼で終わりません。いちばん奥には、データの本人であるお客さまがいます。

3本とも、AIやデータが比べる・選ぶ・つなぐを引き受けるほど、「最後に誰が確かめるのか」がはっきりしてきた話です。ただ、その確かめ方の重さは、3本でまったく違います。その違いが、今週のいちばんの読みどころです。

今週の月曜と水曜は、マーケの予算の話でした。水曜には、予算の1行を「投資」と呼ぶのは、経営層が承認したあとにしてください、と書きました。候補を並べる仕事と、承認する仕事を分ける。今週のニュースは、その分け方が、予算会議の外でも起きていることを示しています。

今週の数字:7%

承認なしでAIに買わせていい、と答えた人の割合です。

数字を並べると、距離が見えます。AIを使った人は80%、何らかの形で任せてもいい人は74%。ところが任せ方を聞くと、承認なしでいいは7%で、43%は毎回自分で承認したいと答えました。実際にAIツールの中で購入まで終えた人は11%です。別々の問いへの答えなので、順に人が減っていく階段ではありません。それでも、使うことと任せることのあいだに段差があることは読めます。

任せてもいいと答えた人が74%いるのに、承認なしでいいは7%です。任せるといっても、多くの人が思い浮かべているのは、最後の一押しを自分に残す任せ方だと読めます。

これは、会社の決裁と同じ形です。少額の消耗品は担当者が決め、大きな契約は役員が決める。生活者も、金額と取り消しにくさで、自分で押すかどうかを分けているように見えます。

だから、AIに対応した売り方を考えるとき、先に決めるのは「AIに全部任せる道」ではありません。お客さまが確かめる場所を、どこに、どの重さで置くかです。では、広告の予算やデータの接続では、その重さはどう決まるのか。今週は、同じ問いがそこでも出ています。

ここから先は、無料登録してくださった方に向けて書きます。

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比べるのはAI、最後に押すのは人

使う人は多い。任せる人は少ない。1本目は、その段差がどこにあり、企業の側で何を整えれば越えやすくなるかの話です。

Riskified:任せたいけれど、押すのは自分

Riskifiedは、ECの不正対策の会社です。調査は2026年9月、米国、英国、日本、メキシコ、ブラジルの5,100人。68%は「相手がAIなのか人なのか、いつも知りたい」と答えています。

出典:https://www.riskified.com/press/agentic-commerce-pulse-consumer-survey-november-2026/
出典(同社の発表を掲載した記事。同社提供の広告記事):https://www.israeldefense.co.il/en/node/72217

この会社がこの調査を出す理由は、読み取っておく必要があります。AIエージェントが代わりに買い物をするようになると、店の側からは、買っているのが本人なのか、本人に頼まれたAIなのか、なりすましなのかが見分けにくくなる。本人の確認は、不正対策の会社の商売の中心です。「人は承認を手放さない」という結論は、この会社の事業とも重なっています。

それでも、数字の向きははっきりしています。使うことと、買わせることのあいだに、大きな段差がある。

McKinsey:14%と、任せてもいい人とのずれ

McKinseyは10月28日、11市場・約2万1,000人を対象にした2026年6月の調査をまとめました。過去3か月に買い物でAIを使った人は、平均で53%。米国は48%で、中国とインドが高い。

AIツールで購入まで終えた人は、AI利用者の14%で、McKinseyによると回答者全体では約9%です。主な6つのカテゴリーでは、AI利用者の21〜30%が「AIに購入まで任せてもいい」と答えていて、実際に任せた人を大きく上回っています。McKinseyは、変化に必要な仕組みの規模が大きく、短期的には可能性を抑えうる、と書いています。お客さまの気持ちより、店や決済の仕組みのほうが追いついていない、と僕は読みました。

なぜ、最後の一押しを手放さないのか

僕の解釈です。

AIが引き受けたのは、比べる作業です。候補を集め、条件で絞り、並べる。時間がかかるのに、間違えても取り返しがつく作業でした。だから任せやすい。

買うことは違います。お金が動き、取り消しに手間がかかる。サイズが合わない、届かない、思っていたものと違う。そのとき誰に言えばいいのかが分からないうちは、人は最後の一押しを自分に残します。

今週の数字の欄で、会社の決裁と同じ形だと書きました。日用品の定期購入ならAIに任せていい。初めて買う高い商品は、自分で押す。金額や商品ごとに聞いたデータはありませんが、生活者も同じ基準で分けているのではないか、と僕は見ています。

決済の業界でも、同じ考え方が形になり始めています。Googleは2025年9月、MastercardやPayPalなど60を超える企業と、AIエージェントが買い物をするための仕組み「AP2」を発表しました。そこでは、価格の上限や時期などの条件を先に決めておく「事前の承認」と、AIが示したカートの中身を見て押す「その場の承認」を分けています。

真似できる部分と、できない部分

真似できるのは、お客さまが押す前に確かめたい情報を、AIにも読める場所に置くことです。

AIに届かない情報の典型は、画像の中の文字、タブやアコーディオンを開かないと出てこない部分、ログインしないと見えない場所です。返品の条件、送料、納期、問い合わせ先が、そういう場所にしかないなら、AIは読めていないかもしれません。商品ページの本文、構造化データ(schema.orgの価格・在庫・返品の項目)、Googleなどに渡している商品フィードの3か所に、同じ内容が入っているかを確かめる。これは規模に関係なく、来週から手をつけられます。

BtoBの会社なら、置き換えて考えられます。購買の担当者がAIで候補を比べ、最後は稟議で承認する。そのとき、料金、契約期間、解約の条件、導入の前提が、AIに拾える形で公開されているか。「お問い合わせください」の先にしかないなら、候補の比較表に載らないかもしれません。

もうひとつ真似できるのは、確かめる重さを、金額と取り消しやすさで分けることです。消耗品の定期購入なら軽くていい。初めての高額な商品なら、確認の画面を一枚増やす。全部を同じ重さにすると、面倒になるか、怖くなるかのどちらかです。日本の通信販売には、特定商取引法で決まった最終確認の画面がすでにあります。AIエージェントが代わりに進めるとき、この画面をどう扱うかは、これから整理される論点です。

真似できないのは、AIエージェント向けの決済と本人確認の仕組みそのものです。一社で作るものではありません。中小企業なら、使っているECのプラットフォームがどこまで対応しているかを確かめる。大企業なら、カード会社や決済事業者のAIエージェント向けの枠組みに参加するかどうかを判断する。そして、規模にかかわらず、AIエージェントをサイトに通すか止めるかは、自社で決める領域です。

あなたの会社への問い

お客さまが「買う」を押す前に確かめたい返品の条件、送料、納期は、ページの本文と商品データに入っているか。画像やタブの中だけになっていないか。

サイトに来る、人ではない訪問者

訪問とクリックという、いちばん古い2つの数字の中身が、同じ週に入れ替わり始めました。

Microsoft Clarity:AIは、サイトで何をしているか

Microsoftのサイト分析ツールClarityは11月4日、AIエージェントがサイトで何をしているかを見る機能を発表しました。AIエージェントの週ごとのセッションは、3週間でほぼ倍になり、約200万件に近づいている。2026年8月13日から9月9日まで、23万511のプロジェクトにまたがる523万件のエージェントのセッションを分析した数字です。

割り算をしておきます。523万を23万で割ると、4週間で1プロジェクトあたり平均約23件。ほとんどのサイトにとって、量はまだ小さい。増え方が速い、という数字として読むのが正確です。だから、量が小さいうちに数え始める意味があります。

発表された機能は3つです。AIエージェントがサイトで何をしているかを見て、主な手続きを終えられるかを試す機能。サイトの使われ方を言葉で聞くと、実際のセッションを根拠に答える機能(小売向けに限定で試験中)。条件を満たすShopifyやWooCommerceの店の商品を、CopilotやBing、MSNに出しやすくする機能です。

「AIが主な手続きを終えられるか試す」に、1本目とのつながりがあります。AIが運べるのは、多くの場合、お客さまの一押しの直前までです。その手前で、在庫や送料や問い合わせ先が読めなければ、お客さまが確かめる画面まで、そもそも届きません。

Digiday:毎年の上乗せ分が、当然ではなくなった

Digidayは11月2日、広告の買い手18人への取材をもとに、広告主がGoogle検索広告に以前より厳しい目を向けていると報じました。

背景は2つあります。ひとつは、AIによる概要が検索結果の中で答えを返すので、クリックが減ること。もうひとつは、減った上位の枠を多くの広告主の自動入札が取り合い、年末の需要がそれを強めて、単価が上がっていることです。

その結果、広告主はクリックのあとに見込みのある商談や売上が生まれたかを、前より細かく見るようになりました。どれだけの予算が問い直されているかは、代理店によって見立てが違います。「Google予算の10〜20%」という声、「10〜30%の配分が動く」という声、「いまは約1割、年末商戦で2〜3割になりうる」という声。検索を削るより、追加の予算を探しているという代理店もいます。自然検索の流入が減るほど、検索広告に出る意味は大きくなる、という声もありました。

ある代理店の担当者の言葉が、端的です。「上乗せの10〜20%が、以前ほど自動では出なくなっている」。毎年当然のように上乗せされてきた予算は、前年の実績を根拠に、ほぼ自動で承認されてきたお金でした。広告主は、そこに確かめる手順を戻し始めた、と僕は読んでいます。

ただ、クリックのあとに商談や売上があったかを確かめるだけでは、「その広告がなかったら、売上は減ったか」までは分かりません。それを知るには、地域を分けて止めてみるようなテストが要ります。今週の広告主たちが踏み出したのは、その手前の一歩です。

なぜ、訪問とクリックが成果を語らなくなったのか

ここからは、発表にも記事にも書かれていない、僕の読みです。

これまで、訪問とクリックは、人の興味の代わりとして数えられてきました。人が来た、人が押した。だから数が増えれば、関心も増えている、と読めた。

今週の2つは、その前提が崩れ始めたことを示しています。訪問の一部は人ではない。クリックの一部は、AIの答えで用が済んだあとの、残りの人です。数は同じでも、中身が変わり始めている。

真似できる部分と、できない部分

Googleの検索結果でAIの概要がどう答えるかは、変えられません。変えられるのは、次の2つです。

ひとつは、AIの訪問を分けて数え始めることです。AIの訪問は、1種類ではありません。

  • ページを取りに来るだけのクローラー:サーバーやCDNのログで見える

  • ブラウザを動かして手続きを進めるAIエージェント:Clarityのようなタグで見える

  • AIの答えから来た人:参照元で見える

大企業なら、いま使っている分析の仕組みが、既知のボットとしてAIエージェントを自動で数から外していないかも見ておきます。そのうえで、AIエージェントが申し込みまで進めるかを一度試す。止まる理由は、人と同じ迷いのこともあれば、ボット対策が意図どおり止めていることもあります。

もうひとつは、検索広告の予算のうち、毎年当然のように上乗せしてきた分にだけ、確かめる手順を入れることです。全部を疑う必要はありません。たとえば、上乗せした分だけを一部の地域で外して(または一部の地域だけで上乗せして)、売上の差を見る。地域を分けられないほど件数が少ない会社なら、上乗せ分に、どうなったら止めるかを先に書いておく。最後に足した分が戻っているかを見る、という考え方です。

あなたの会社への問い

先月のサイトの訪問のうち、人ではない訪問はどれくらいあったか。そのAIは、あなたの会社の申し込みまで辿り着けたか。

分からないなら、来週はそれを数えるだけで十分です。

つなぐ、畳む、止まる

データの接続で最後に確かめるのは、企業どうしの契約だけではありません。

Publicis:つなぐ先は2万5,000

フランスの広告会社Publicisは、米国のデータ接続の会社LiveRampの買収を完了しました。買収額は約22億ドル。5月に発表し、米国の競争当局の審査を経ての完了です。

Publicisは、LiveRampのデータ連携の技術と傘下のEpsilonの技術を組み合わせ、「AIの成長基盤」として広告主に提供します。LiveRampは、2万5,000のメディアと、500社の技術・データのパートナーにつながっています。

発表で繰り返されているのは、「顧客が自分の環境の中で、データを持ち、管理できる」という言い方です。LiveRampは、競い合う広告会社や小売、媒体が、中立の場所としてデータをつなぐのに使ってきた会社でした。競合の傘下に入っても、データはPublicisのものにはならない。そう説明しないと、つなぐ先が離れていく。Adweekの見出しが「競合が離れる心配はしていない」だったのは、その裏返しです。ここでの「誰がデータを持つか」は、まず企業どうしの信頼の話です。

Smart-C:長く続いた仕組みを、畳む

アドウェイズの子会社ADWAYS DEEEは11月2日、2004年2月から続いたアフィリエイトのサービス「Smart-C」を、11月30日で終えると発表しました。広告の配信、成果の計測、管理画面の提供が止まります。グループのJANetとAppDriverは続きますが、データは自動では移りません。

終了の理由について、発表は「事業環境の変化および今後のサービス提供体制を総合的に勘案した結果」としています。ここから先を読み込むことはしません。見ておきたいのは、畳むときの段取りです。長く使った仕組みでも、終わる。データをどこへ移すか、止めたあとに成果をどう数えるかを決めるのは、使っている企業の側です。

Meta:つなぐ前に、止まった

Metaは11月5日、商用の利用規約の変更を一時停止しました。変更後の規約は、Metaのビジネス向けツールを使う事業者のサイトの内容を、Metaが取得できるようにするものだったと報じられています。反発したのは報道機関を含むサイトの運営者で、適用日は10月30日から11月20日に延び、そのうえで止まりました。新しい日付は決まっていません。

規約に同意した結果、気づかないうちに、自社のサイトの内容が使われる。そういう変更でした。止まったことを安心材料にするより、自社のデータを、どのプラットフォームに、どの目的で、どこまで渡しているかを、一度書き出しておく機会だと思います。

つなぎ方を、最初から選ぶ

同じ週に、アドウェイズのグループはカレンダーアプリのTimeTreeと、予定の情報を個人に結びつかない「文脈」に変え、データクリーンルームの中で広告に使う実験も発表しています。データクリーンルームは、元のデータを相手に渡さず、決めた条件の集計結果だけを返す仕組みです。利用者を特定する情報は渡さない、としています。

ただし、個人を特定しない「文脈」でも、受け取る側で広告用のIDなどと結びつくことが想定されるなら、個人情報保護法の「個人関連情報」として、渡す側が、受け取る側で本人の同意が取れているかを確かめる必要が出てきます。つなぎ方を選ぶ実験は、その線を引きながら進むことになります。

いちばん奥の承認は、お客さまにある

データの接続で確かめるのは、企業だけではありません。もう一段奥に、データの本人であるお客さまがいます。日本なら、個人情報保護法のもとで、何を、どの目的で使うかを通知し、必要なら同意をもらう。社内の誰かがつなぐことを承認しても、お客さまが知らない接続は、いつか説明を求められます。

1本目で生活者は「最後は自分で押したい」と答えていました。データについても、同じことが起きていると僕は読んでいます。

真似できる部分と、できない部分

真似できるのは、顧客データを渡している先を、1枚に書き出すことです。

  • 広告のプラットフォーム、分析の道具、外部の代理店、AIのサービス

  • それぞれに渡している情報と、使う目的

  • その根拠(お客さまへの通知か、同意か)

  • 社内で、誰が決めたか

ニュースサイトやSNSなどを運営する会社は、2023年6月に施行された電気通信事業法の外部送信規律に対応して、サイトのタグから外部に送っている情報の一覧を作っているはずです。ただ、自社商品のオンライン販売や企業のホームページは、この規律の対象外です。一覧がある会社はそれを起点に、ない会社は新しく作る。どちらの場合も、タグ以外の渡し方(サーバーから直接送るデータ、広告媒体への顧客リストのアップロード、データクリーンルームでの連携、AIツールへの入力)を行として足し、「根拠」と「承認者」の列を加えます。

畳むときの段取りも、始めるときに決めておけます。データの書き出し方、移し先、止めたあとの数え方。Smart-Cのように、長く使った仕組みでも終わります。

真似できないのは、数十億ドルで接続の会社を買うことです。大企業なら、データクリーンルームでの連携やリテールメディアへの出稿の契約に、データの持ち主と使う目的が書けているかを確かめる。中小企業なら、お客さまに「このデータを、この目的で使います」と一行で言える状態を保つ。規模がないぶん、説明の明快さで選ばれる余地があります。

あなたの会社への問い

あなたの会社の顧客データは、いまいくつの外部のサービスにつながっているか。それぞれ、社内の誰が決め、お客さま本人はそのことを知っているか。

失敗例:AIで作った広告に、「もっとうまく作れる」という声が集まった

米国のウォッカブランドSvedkaは、2026年のスーパーボウルで30秒の全国向け広告を流しました。社内のチームが手がけ、AIの制作会社がブランドのマスコットである女性型ロボットをAIで動かした。ウォッカだけの全国向けのスーパーボウル広告は、30年以上ぶりでした。

この広告は、AIを使ったこと自体で批判を受けました。今回の企画の審査に加わるテレビ司会者のアンディ・コーエンは、前回の広告が「大胆で、奇妙で、ディストピアの悪夢」と言われたことに触れています。

11月2日に発表された次の手は、消費者に広告を作ってもらう企画でした。缶入りの新商品を使った15秒の広告を、12月1日まで受け付ける。賞金は50万ドル。ブランドは素材のキットを用意し、作り方は「AI中心でも、笑えるほど低予算でも、思いがけず映画的でも、野心的でもいい」としています。親会社のCMOは「2026年にやったことは誇りに思っている。でも、自分たちならもっとうまく作れる、という声をたくさん聞いた」と話しました。

どこで、つまずいたのか

Svedkaは理由を語っていないので、ここは推測です。

同じ週に、もうひとつAIで作った広告の話がありました。Cloroxの猫砂ブランドFresh Stepは、AIでしゃべる猫たちを生み出し、依頼から30日で3本の15秒広告を完成させました。費用は従来の約10分の1。ブランドの担当者は「誰かをだますつもりはない」と話し、市場の反応を見て直せる作りにしたといいます。市場の反応は、まだ出ていません。

並べると、違いが見えます。Fresh Stepは、作り物だと一目で分かる表現で、直しながら使う前提の場に出した。Svedkaは、いちばん多くの人が見て評価する舞台に出し、作り方そのものが話題になった。問題は、AIを使ったことより、見る側がその作り方を受け入れる前に、いちばん大きな舞台に出したことだったと読めます。

失敗から学べること

AIを使うかどうかより先に、どの舞台で、どんな期待の中で使うかを決める。年に一度の大きな舞台では、作り方も評価の対象になります。小さく出して直せる場なら、AIの速さと安さがそのまま効く。

批判の受け止め方にも学べることがあります。謝罪や撤回で終わらせず、「では、作ってみてください」と言った。表現の主導権の一部を、生活者に渡しています。

Svedkaは、Nielsenのデータとして、過去1年の米国のスピリッツで数量の伸びがいちばん大きいブランドだと説明しています。ブランド側の説明ですが、広告が批判されても事業の数字は伸びていた。表現の評価と事業の評価を、分けて持っていたことになります。

生活者が作った広告を本物の広告として使うなら、肖像、音楽、素材の権利をどう保証してもらうかの取り決めが要ります。中小企業が真似るなら、賞金より先に、その取り決めを用意しておきたいところです。

あなたの会社への問い

AIで作るもののうち、作り方まで見られる「大きな舞台」はどれか。それは、誰が出すと決めているか。

AIの実例:提案の準備が、10営業日から2営業日に

今週のAIの実例は、アドウェイズの「PRAX」です。広告主へのプロモーション提案に使う社内のソリューションで、過去の提案で蓄積したノウハウと、ストラテジックプランナーの考え方の手順を取り込んでいます。

2026年7月から運用を始め、10月末までに、プランニング部門の20件の提案で使われました。ターゲットに合う生活者像を1万人規模でつくり、提案の前に反応を確かめる。提案の準備にかかる時間は、従来の10営業日から2営業日になったと発表しています。

この発表で目を引くのは、注意書きです。「AIによる疑似検証であり、実市場での成果を保証するものではありません」。会社自身が、AIの検証で何が言えて、何が言えないかを書いている。

ここに、今週の主題がもう一度出ています。AIは、提案の候補を比べ、反応を予想するところまでを引き受けた。でも、その提案を広告主に出すかどうか、実際の市場でどうだったかを確かめるのは、人です。

浮いた8営業日を、何に使うか

準備が8営業日短くなった。その時間の使い道は、少なくとも3つあります。

提案の数を増やす。広告主との対話に時間を戻す。実際の市場での結果を追って、疑似検証が当たったか外れたかを確かめる。

どれを選ぶかで、AIを入れた意味が変わります。提案の数だけが増えると、外れた疑似検証が確かめられないまま、次の提案に使われていく。3つ目に時間を回せば、疑似検証の精度そのものが上がっていきます。

PRAXの強みは、過去の提案のノウハウと、プランナーの考え方の手順を取り込んでいることです。AIの差は、モデルの性能だけでは決まりません。その会社が、過去の判断とその理由を、どの細かさで残していたかで決まる。採用しなかった案とその理由まで残っている会社ほど、AIは使いやすい。1万人規模の生活者像は真似できなくても、過去の企画書を一か所に集め、勝った案と負けた案に理由を一行ずつ足すことなら、どの会社でもできます。

注意書きの書き方も、そのまま型として使えます。AIで出した数字を社外に見せるとき、「何が言えて、何が言えないか」を一行添える。AIで速くなった分の時間を、結果を確かめる時間に回しているかどうか。そこで、AIを入れた意味が決まります。

今週の編集済みニュース18本(うち日本13本)

4つの領域ごとに、最初の一段落でその週の流れをまとめ、そのあとに個別のニュースを置きました。忙しい方は、各領域の最初の一段落だけ読めば、今週の全体像はつかめます。

マーケティング

今週の流れ:年末の企画は、買ったあとと、街の中に入口を置く。 購入した人への限定品、館内のスタンプラリー、手に取って試せる場。年末商戦の企画は、画面の外の入口と、買ったあとの関係を組み立てていました。応募の数だけでは測れない企画が増えています。

リーガル、GORE-TEXの50周年企画。店頭の購入者に先着で限定バンダナ、抽選でギフトカード(11/6発表、11/6〜23)
GORE-TEXのフットウェアを店頭で買った人に、先着で限定バンダナ(オンラインでの購入は対象外)。抽選で10名に2万円分のギフトカードで、応募には会員登録が要ります。
→ 自社の特典が、購入の前に偏っていないか。購入後の特典を会員登録とセットにすると、獲得の費用を「会員1人あたり」で比べられるようになります。

OPA、ベティー ブープとの冬の企画。全国14施設でスタンプラリー、元日からおみくじとウィッシュカード(11/6発表、11/14〜2027/1/11、施設により異なる)
スタンプラリーは11/14〜12/25、おみくじとウィッシュカードは1月1日から。アプリの抽選も組み合わせています。
→ 館内を歩く、願いを書くという行為を企画の単位にしている。自社の施策で、売り場を「歩いた距離」を数えているかを見る機会です。

花王キュレル、「セラミドケアPARK」を福岡・東京・大阪で。交通広告は9都市(11/5発表)
福岡(11/14〜15)、東京・MIYASHITA PARK(11/21〜22)、大阪・なんばCITY(12/19〜20)。予約不要で無料。別に店頭のキャンペーンで抽選で最大2万名にサンプルを届け、11/30から1週間、9都市で交通広告を出します。
→ 見る・試す・買うの順番を、場所で分けている。自社の冬の施策で、「試す」場所がどこにあるかを確かめる材料です。

マクドナルド、浜崎あゆみとの企画の第2弾。「ayuベストセット」を11/11から(11/5発表)
楽曲をイメージした2つのセットを11/11の10時30分から販売。「evolution」のリリックビデオを先に公開しました。
→ 商品の情報より先に、楽曲の記憶を置いている。自社の顧客がすでに持っている記憶のうち、商品につなげられるものは何かを考える材料です。

ヨックモック、Xでクリスマスの贈り物企画。引用リポストで当選確率が上がる(11/1開始、集計は二次情報)
フォローとリポストで応募、ハッシュタグ付きの引用リポストで確率が上がる。11/3時点で、リポスト16,278件、引用リポスト8,529件と報じられています。
→ 参加を一段深くすると、目に見える量も変わる。ただ、応募のあとに何を返すかが決まっていないと、量は関係に変わりません。

ブランディング

今週の流れ:表現の「作り方」が、ブランドの一部になった。 Svedkaは、AIで作った広告への批判を受けて次の手を打ち、Fresh StepはAIで1か月の広告を出しました。何を見せるかと同じくらい、どう作ったかが、ブランドの評価に入るようになっています。

Clorox「Fresh Step」、AIで依頼から完成まで30日。費用は従来の約10分の1(11/5報道)
AIでしゃべる猫のキャストを生成し、3本の15秒広告を30日で完成。テレビとSNSで11/9までに出ます。成果の数字はまだありません。
→ 速く安く作れた分を、市場の反応を見て直すことに使っている。AIで浮いた制作費の使い道を、先に決めているかどうかです。

クロス・マーケティング、限定品の調査。興味がある人は52.3%、魅力の1位は「今しか手に入らない特別感」(11/5)
全国20〜69歳の1,100人。20代と40代の女性では6割を超えました。
→ 限定は動機になる。同時に、手に入らなかった人の不満も生む。限定を使うなら、入手できなかった人への別の入口まで設計しておきたいところです。

事業グロース

今週の流れ:つなぐ、畳む、止まる。 広告会社がデータ接続の会社を買い、商社が広告会社の筆頭株主になり、金融とメディアが合弁会社をつくる。同じ週に、長く続いた成果報酬の仕組みが畳まれ、プラットフォームの規約の変更が止まりました。

Publicis、LiveRampの買収を完了。約22億ドル(11/2報道)
詳しくは今週の3本で。
→データ接続の会社が競合の傘下に入った。LiveRampを使っている会社は、契約上のデータの扱いが変わらないかを確かめておきたい。

伊藤忠商事、アドウェイズを持分法適用会社に。議決権は20.44%へ(11/4開示、11/5発表)
伊藤忠商事は第三者割当で1株352円、総額約11億円の株式を引き受け、創業者と代表者からも株式を買い取ります。議決権の割合は10.24%から20.44%になり、筆頭株主になる予定です。資金の使い道は、広告配信の仕組みに約4億円、電力に関わる新しい事業に約7億円。
→ 総合商社の顧客基盤と、広告配信の技術がつながる。アドウェイズのサービスを使っている会社は、株主の変化でデータの扱いや取引条件が変わらないかを見ておきたい。

SBIグループとフジ・メディアHD、コンテンツとIPの合弁会社を2027年1月に(11/2)
出資は50%ずつ、資本金1億円(資本準備金を含む)。SBIは「8,800万を超える顧客基盤」を挙げていますが、データをどう共有するかは示されていません。
→ 金融とメディアの接点が、同じ会社の中に入る。自社でもグループ内でデータを横断して使うなら、お客さまへの説明が追いついているかを確かめる材料です。

アドウェイズの子会社ADWAYS DEEE、アフィリエイトの「Smart-C」を11/30で終了。2004年から(11/2)
詳しくは今週の3本で。
→ データは自動では移らない。使っている会社は、移し先と、止めたあとの成果の数え方を、11月中に決めておく必要があります。

AIの買い物エージェントが、AmazonとWalmartの広告事業を揺さぶる可能性(11/4、Reuters配信)
eMarketerの推計で米国のリテールメディアは744億ドル、2社で88%。2030年にはAIエージェント経由の買い物が米国のECの10〜20%になるという見通し(Morgan Stanley)も紹介されています。一方で、「存亡の危機ではなく、進化」という見方もあります。
→ AIが代わりに買うと、小売のサイトで広告を見る時間が減る。リテールメディアに出稿している会社は、広告枠の量より、AIに読まれる商品データの質に予算を振る時期を考え始めたい。

AI

今週の流れ:AIが、作る・分析する・提案する・実行するを一本につなぐ。 広告の計画から分析まで、顧客体験の計画から実行まで、営業の調査から計画の見直しまで。AIの発表が、作業の一部から仕事の流れ全体へと広がってきました。流れが長くなるほど、途中で人が確かめる場所の設計が要ります。

Amazon Ads、「unBoxed Tokyo 2026」でAmazon Ads Agentを発表。約1,000の指標を、ふだんの言葉で分析(11/5)
広告の計画、ターゲティング、分析をAIが手伝います。別々だったディスプレイ・動画・音声などの買い方を1つにまとめる「DVA+」は、日本の広告主にも今後数か月で提供される予定です。米国で、自然言語でターゲティングの提案を適用した広告主では、ユニークな顧客が25%超増え、表示単価が平均10%超下がったと自社で発表しています。
→ 代理店や運用担当に、Agentに投げる問いを3つだけ指定する。1,000の指標から何を見るかは、道具は選んでくれません。選ぶのは発注する側です。

Adobe、「CX Enterprise Coworker」をChatGPT、Claude、Gemini、Copilotなどから使えるように(11/4)
顧客体験の計画、実行、最適化を支援するAIを、社員がふだん使うAIの中から呼び出せるようにしました。
→ 部署ごとに使うAIが違う会社は増えます。ブランドの禁止事項と顧客の定義を、どのAIからも同じように引ける1枚の文書にしてあるかを確かめたい。

日本オラクル、営業とサービス向けのエージェント型アプリケーションを発表(11/2、米国発表は10/26)
「ガバナンスが組み込まれたエージェント型実行基盤」として、テリトリーの計画、サービスの点検、需要の計画、経営層向けの説明資料の作成などを挙げています。日本での提供時期や価格は示されていません。
→ AIの発表で「ガバナンス」が前に出てきたと読めます。自社でAIに任せる業務に、誰が止められるかが書いてあるかを確かめる材料です。

LINEヤフー、LINE公式アカウントの「AIモード」を11月から5社で先行(10/27の発表をまとめた記事、11/5)
転職支援、中古車、飲食店の予約などの5社から。広告からLINE公式アカウントへつなぐ「チャット誘導広告」は12月から。先週の便で取り上げた発表です。
→ AIが接客を始める前に、「言ってはいけないこと」と「人に引き継ぐ条件」を書いておく。先週の便で書いたことが、11月中に始まります。

アドウェイズ×TimeTree、予定の「文脈」で広告を取引する実験(11/4)
詳しくは今週の3本で。最終段階では、広告主側と媒体側のAIエージェントどうしの直接取引をめざすとしています。
→ つなぐ量より、つなぎ方を先に決めた例です。自社のデータ連携で、個人に結びつかない形で足りるものはないかを見直す材料になります。

Gartnerの調査として、「AIを理由に顧客対応の人員を減らした組織は21%、すでに再雇用した組織は7%」(11/5報道)
顧客対応の責任者275人の調査(7〜8月)。平均の削減率は16.7%で、11%が18か月以内の再雇用を予定していると報じられています。それぞれの割合の分母は報道からは分かりません。Gartnerの発表そのものは確認できず、報道で確認した数字です。
→ 一次対応をAIに渡すと、難しい対応が人に集まる。人を減らす前に、人が引き受ける仕事を決めておく必要があります。

世の中の動き:6人に1人の詐欺、AIに従った13.4%、AIウォッシング

米国の大人の6人に1人が、年末の買い物で詐欺に遭った

Nortonの米国の大人1,000人の調査です(9月10〜21日)。ネットの買い物の詐欺について、去年より不安だという人は48%。年末の買い物シーズンにネットで詐欺に遭った経験がある人は16%で、6人に1人。Z世代では25%でした。お金を失った人の平均の被害額は394ドルです。

今週の主題につながる数字もあります。83%がAIアシスタントを買い物に使うと答えた一方で、AIが詐欺を避けてくれると自信を持てる人は、そのうち42%でした。調査も問いも違うので、1本目の数字とは比べる前提がそろっていません。それでも、使う人は多いが任せきれない、という方向は似ています。AIが買い物の途中に入るほど、販売者が本物か、問題が起きたら誰に言えばいいかを確かめる場所が、企業の側に必要になります。

AIを使って選んだ人のうち、AIに従ったのは13.4%

楽天インサイトの調査です(7月24〜28日、予備調査5,000人、本調査1,003人)。過去1年に、商品やサービスを選ぶときにAIを使った人は25.6%。そのうち、最終的に「AIに従った」人は13.4%で、「自分の直感を優先した」人は48.8%でした。

AIを使った買い物で失敗した経験がある人は20.7%。そして、AIを使うと選ぶ楽しさが減ると感じる人が34.5%、3人に1人いました。日本の生活者も、AIを比べる道具として使い、決めるのは自分、という距離を取っています。AIに任せる体験を設計するとき、選ぶ楽しさまで奪っていないかも、見ておきたいところです。

韓国で、「AIウォッシング」の指針案

韓国の公正取引委員会は10月22日、AIを使っていると過大に宣伝したり、誤解させたりする広告を対象にした指針案を公表し、11月11日まで意見を募っています。法的な拘束力はなく、事業者が自分で確かめるための点検表がついています。電気マットや猫用トイレ、枕、ダイエット用の飲料などが「AI」の商品として売られていた例が挙がりました。

「AIを使っています」は、ここ数年、商品の価値として語られてきました。それが、何に使い、どこを人が確かめているかを説明する責任に変わり始めている。韓国の動きは指針案の段階ですが、日本でAIを売り文句にしている会社にとっても、表示の根拠を一度確かめておく機会です。

3本を並べると、見えてくること

並べてみると、3つの「確かめる」は、重さが違います。

日用品の買い物のように、安くて取り消しやすいものなら、確かめる手順は軽くていい。検索広告の上乗せ分は、ほぼ自動で承認されてきたお金に、軽い確認が戻ってきた。顧客データの接続は、一度渡すと取り消しにくいので、いちばん重い確認が要ります。しかも、その確認はお客さま本人にまで届く必要がある。

確かめる重さは、金額と、取り消しにくさで決まる。これが、今週の3本から僕が引き出した見立てです。AIに任せる範囲を広げるときに決めるのは、任せるかどうかより、どの重さの確認をどこに置くかです。

月曜と水曜の予算の話も、同じところにあります。水曜号のカードで予算の1行を「投資の候補」にするのは道具の仕事で、「投資」にするのは経営層の承認です。予算会議の中でも、お客さまの手元でも、データの接続でも、候補を並べる仕事と確かめる仕事を分けて、確かめる側の重さを決めておく。今週は、そのことが同じ週に3回出てきました。

この見立ての弱いところ

今週の数字は、どれも調査会社や当事者の数字です。Riskifiedは本人確認を商売にする会社で、「人は承認を手放さない」という結論は、その会社の事業とも重なります。同社の発表ページは検索で存在を確認できたものの、こちらからは開けず、数字は同社の発表を掲載した記事(同社提供の広告記事)で確かめました。McKinseyの数字は6月の調査、Clarityの数字は8〜9月のデータの分析です。

国ごとの違いも大きい。McKinseyの調査では中国とインドの利用が高く、米国は平均より低い。Riskifiedの5か国には日本も入っていますが、日本だけの数字は示されていません。日本の数字として手元にあるのは、楽天インサイトの13.4%です。

最後に、括り方について。PublicisもMetaもアドウェイズも、「承認」や「確かめる」を合言葉にはしていません。言葉を当てたのは僕です。ただ、生活者の調査と、広告の買い手への取材と、規約の停止が、同じ「誰が最後に確かめるか」で説明できてしまう週は、そう多くありません。

あなたの会社で、今週確かめる3つのこと

月曜の会議で、そのまま担当を決められる粒度にしました。

1. 返品の条件・送料・納期は、ページの本文と商品データに入っているか
担当はEC・ウェブの責任者。主力の商品ページを3つ選んで、本文、構造化データ、商品フィードの3か所を見比べるだけで、1日で終わります。

2. AIの訪問を3つに分ける数え方を決め、計測を始めたか
取りに来るだけのクローラー、手続きを進めるエージェント、AIの答えから来た人。担当は分析の担当者と情報システム。まだ量は小さいはずです。小さいうちに、数え方だけ決めておく。

3. 顧客データの渡し先の一覧に、「根拠」と「承認者」の列があるか
担当は法務か情報システム。外部送信規律の対応で作った一覧があれば起点にし、タグ以外の渡し方を行として足します。

今週の問い

AIツールやAIエージェントに、社内の予算やデータや発注を任せるときの上限を、職務権限規程に1行足すか。

金額の上限、渡してよいデータの種類、人が確かめる場面。予算はマーケと財務、データは法務と情報システムと、持ち主は違います。それでも、「AIに任せてよい上限」を書いた1行があれば、どの部署も同じ基準で判断できます。お客さまの側で確かめる場所は、点検の1つ目で見たとおり、ECの確認画面と利用規約で決めます。来週の経営会議では、足すかどうかだけ決めてください。足すと決めたら、水曜号の「止める条件を、始める前に書く」と同じく、任せる前に書いておく。

来週、見ておくこと

広告とマーケの会社の決算(11/10〜13)
11/10に博報堂DYホールディングスと日本マクドナルドホールディングス、11/11にサイバーエージェント(通期)、11/13に楽天グループとセプテーニ・ホールディングスなどが予定されています。広告の会社が、AIによる検索の変化と、データの接続をどう語るかを見ておきたい週です。日程は各社のIRで確認してください。

マクドナルド「ayuベストセット」発売(11/11)
楽曲の記憶を注文につなぐ企画が始まります。発売日の反応と、もう1本のリリックビデオの公開を見ておきたい。

韓国のAIウォッシング指針案、意見募集の締切(11/11)
「AIを使っています」という表示の根拠を、規制の側がどう線引きするかが見えてきます。

SmartNews Ads、広告アカウント作成時の入力項目の変更(11/11)
11/4から延期された変更です。小さな仕様の変更でも、社内の命名のルールや承認の流れに影響します。運用している会社は、変更点を見ておく週です。

OPAのスタンプラリーと、キュレル「セラミドケアPARK」福岡(11/14〜、OPAは施設により異なる)
館内と街なかに入口を置く2つの企画です。参加のどの段階でアプリや会員登録を求めているかを、見ておきます。

今週の要点

  • 買い物でAIを使った人は8割。それでも、承認なしでAIに買わせていい人は7%。生活者は、比べるのはAIに、最後の一押しは自分に残している

  • サイトに来る、人ではない訪問者が増え始めた。広告主は、毎年当然だった検索広告の上乗せ分を、クリックの先を確かめてから出し始めた

  • データは大きくつながる一方で、畳まれる仕組みと、止まった規約があった。差がつくのは、規模よりつなぎ方を説明できるか。いちばん奥で確かめるのは、お客さま本人

  • 確かめる重さは、金額と取り消しにくさで決まる。AIに任せる社内の上限を、職務権限規程に1行書くかどうかを、来週の経営会議で決める

来週は、決算の季節に、広告の会社がAIとデータをどう語るかを読みます。

***

自社の「確かめる場所」を、一緒に整理したいという方は、気軽に声をかけてください。商品情報の置き方、AIの訪問の数え方、データの渡し先の書き出し方。どこから手をつけるかを、一緒に整理します。

***

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📚 ふだんの発信
Voicy「Business Growth Radio」:https://voicy.jp/channel/821417
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ではでは。
— 山口偉大 / Yamaguchi Takehiro

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